「産後、早く体を戻したい」
育児で体はボロボロなのに、焦る気持ちだけが先に走る。そんなことありませんか?
院長として、産後のママさんから「腹筋って、いつからやればいいですか?」という質問を本当によく受けます。その言葉の裏に、「早く元に戻りたい」という切実な気持ちがいつも見えます。
その気持ち、すごくよくわかります。でも実は、産後の腹筋には「急いではいけないタイミング」があるんです。
特に注意してほしいのが、骨盤底(こつばんてい)という体の深い部分です。ここをしっかり守らないまま腹筋運動を始めると、後々トラブルの原因になることがあります。
この記事では、産後1ヶ月健診で医師から「運動OK」の許可が下りた後から始められる、骨盤底を守りながら体を戻す方法をお伝えします。
ガスケアプローチや腹直筋離開についても、わかりやすく解説します。帝王切開の方は担当医に確認してから始めてください。
産後の腹筋、なぜ急いではいけないの?
産後の体は、見た目以上に大きなダメージを受けています。
特に大事なのが「骨盤底」です。骨盤の底にある筋肉・靭帯・筋膜の集まりで、子宮・膀胱・直腸などの臓器を下から支える「体の土台」のような存在です。
妊娠中は赤ちゃんの重みを9ヶ月以上支え続け、出産のときには大きく伸ばされます。それだけ負担を受けた部分なんです。
この骨盤底が十分に回復する前に腹筋運動(クランチ・プランクなど)を始めると、お腹の内側の圧力(腹圧)が一気に高まります。
弱っている骨盤底がさらに押し下げられてしまう可能性があります。
その結果として起こりやすいのが、こういった症状です。
- 尿漏れ・頻尿
- 骨盤臓器脱(子宮や膀胱が下がってくる)
- 腰痛・恥骨痛の悪化
「産後から尿漏れが気になって、思い切り笑えなくなった」という声も、来院されるママさんからよく聞きます。原因は筋力不足だけではなく、骨盤底のダメージが回復しきる前に動きすぎたことにある場合も多いんです。
「早く体を戻したい」という気持ちは自然です。でも、まず土台を整えることが、結局は体の回復の近道になります。
腹直筋離開とは?セルフチェックの方法
もうひとつ、見落とされやすいのが「腹直筋離開(ふくちょくきんりかい)」です。
簡単に言うと、お腹の中央にある縦の筋肉(いわゆるシックスパック)が、左右に開いてしまった状態のことです。
妊娠中にお腹が大きくなるにつれて筋肉が引き伸ばされ、産後もそのまま開きが残ることがあります。自覚症状が少ないため、気づかずにいる方も少なくありません。
「お腹が戻らない」「腰が痛い」という悩みの裏に、腹直筋離開が隠れていることもあります。
セルフチェックの方法
- 仰向けに寝て、ひざを立てます
- おへその真上に指を置きます
- 軽く頭を持ち上げて「腹筋をする動作」をします
- 指先にお腹の縦の溝(凹み)を感じたら、離開の可能性があります
指2本以上入るような開きが残っている場合は、通常の腹筋運動をしばらく控えてください。
まず骨盤底・インナーマッスルの回復を優先することが大切です。
ガスケアプローチとは?
「ガスケアプローチ」とは、フランスの産婦人科医・ブリジット・ド・ガスケ氏が開発した、産前産後の体ケアの方法です。
日本でも助産師や理学療法士の間で広く使われています。
最大の特徴は「呼吸と姿勢を通じて骨盤底を守りながら動く」という考え方です。
通常の腹筋運動は「お腹に力を入れて縮める」動作ですが、ガスケアプローチでは「息を吐きながら骨盤底を引き上げる」動作を基本にします。
これにより、腹圧を過度に高めることなく、インナーマッスルと骨盤底筋を同時に働かせることができます。
「体を締める」ではなく「骨盤底から体を立て直す」というイメージです。焦りなく、体と対話しながら回復を進めることができます。
このアプローチをお伝えしたママさんから、「これなら育児の合間でもできそうです」「産後にこんなケア方法があるって知らなかった」という声をよくいただきます。
産後1ヶ月から始められるセルフケア3ステップ
産後1ヶ月健診で「運動OK」の許可が出てから始めてください。帝王切開の方は担当医に相談の上進めてください。
ステップ1:骨盤底の呼吸(ガスケアプローチ基本)

まずはここから。骨盤底に「ある」ことを教えてあげるような感覚で行います。
やり方
- 仰向けに寝て、ひざを立てます(足の裏を床につける)
- 鼻からゆっくり息を吸います(お腹・肋骨が自然に膨らむのを感じる)
- 口から細く長く息を吐きながら、骨盤底(お尻の穴〜前の方)を軽く引き上げるイメージで締めます
- 吐ききったら、自然に力を抜いて吸います
目安:1回10呼吸 × 1日2〜3セット
お尻や太ももに力が入らないように。骨盤底の内側だけを意識します。最初は感覚がつかみにくくても大丈夫です。
ステップ2:キャットカウ(背骨の可動性を取り戻す)

育児中は同じ姿勢が続いて、背骨が硬くなりやすいです。背骨の動きを取り戻すことで、骨盤底の回復も促されます。
やり方
- 四つん這いになります(手は肩の真下、ひざは腰の真下)
- 息を吸いながら背中をゆっくり反らせ、目線を上げます(カウポーズ)
- 息を吐きながら背中をゆっくり丸めて、目線をおへそに向けます(キャットポーズ)
- 呼吸に合わせてゆっくり繰り返します
目安:10回 × 1日1〜2セット
腰を無理に反らせず、気持ちいい範囲で動かしてください。産後は関節が緩んでいるため、ていねいに行うことが大切です。
ステップ3:ヒップリフト(骨盤底とお尻の連携を取り戻す)

骨盤底とお尻の筋肉(大臀筋)の連携を取り戻す動きです。ステップ1の呼吸を意識しながら行います。
やり方
- 仰向けに寝て、ひざを立てます
- 鼻から息を吸って準備します
- 口からゆっくり息を吐きながら、骨盤底を引き上げつつお尻をゆっくり持ち上げます
- 最高点で2〜3秒キープし、息を吸いながらゆっくり降ろします
目安:10回 × 1日1〜2セット
腰が過度に反らないよう注意してください。お尻だけで持ち上げるのではなく、骨盤底〜体幹の力を意識します。
いつから通常の腹筋運動を始めていい?
上記の3ステップを2〜4週間続けてみてください。
次のことがクリアできたら、通常の腹筋運動へ進むサインです。
- 骨盤底の引き上げを意識的にコントロールできる
- 尿漏れがない、もしくは改善してきている
- 腹直筋離開のセルフチェックで、指1本以下の開きになっている
来院されたママさんにこのチェックリストをお伝えすると、「え、まだ早かったんですね」と気づかれる方がとても多いです。焦って始めても、回り道になることがあります。
この段階になってから、プランクや通常の腹筋運動を少しずつ取り入れていきましょう。
焦らず段階的に進めることが、体の回復を早める近道です。
茅野・原村・富士見エリアのママへ
「産後の体、どう戻せばいいかわからない」
「育児が忙しくて、自分の体のことを後回しにしてきた」
そんなご相談を、八ヶ岳のふもとにあるたなか整骨院鍼灸院では多く受けています。
産後1ヶ月健診後から、ガスケアプローチの考え方を取り入れながら、お一人おひとりの体の状態に合わせてケアを進めていきます。
「まず体のことを聞いてみたい」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
原村・茅野・富士見・諏訪エリアにお住まいのママさんのご来院をお待ちしています。

