サッカー中の脳震盪|子どもの症状の見分け方と正しい対応

サッカー中に頭を打った子どもが「大丈夫」と立ち上がったとき、そのまま試合を続けさせていいのか迷ったことはありませんか?

脳震盪は、意識を失わないことも多く、外から見ただけでは判断しづらいことがあります。

この記事では、親御さんやコーチが知っておきたい見逃しやすい症状のサイン、その日にやってはいけないこと、安全に競技へ戻るための考え方をわかりやすくまとめました。

「大丈夫、立ってるし」——その判断が危ない

週末のサッカーの試合。

相手と競り合った息子が、頭を打って倒れた。

数秒後、自分で立ち上がった。

「大丈夫!」と手を振っている。

ほっとして、そのままプレーを続けさせた。

そういうご経験のある親御さんは、多いと思います。

でも、実はその判断が、一番危険なことがあります。

脳震盪を起こした選手が意識を失うのは、全体の10%以下です。

つまり90%以上の子どもは、頭を打ったあとも「普通に立っている」のです。

立てているから大丈夫、というわけではありません。

私はたなか整骨院鍼灸院の院長として施術を行う傍ら、社会人サッカーチームの専属トレーナーとして試合に帯同し、小学生のサッカーコーチもしています。

スポーツの現場で頭部への衝撃を目にするたびに、「親御さんとコーチに知っておいてほしいことがある」と感じてきました。

このコラムでは、脳震盪の症状の見分け方から、その日に絶対にしてはいけないこと、競技に戻るまでの正しいステップまでを、できるだけわかりやすくお伝えします。

子どもが長くスポーツを楽しめるように、ぜひ最後まで読んでください。

脳震盪とは何か?意識を失わなくても脳震盪は起こる

脳震盪とは、頭部への衝撃によって脳の機能に一時的な障害が起きた状態です。

「気を失った=脳震盪」と思っている方が多いのですが、これは大きな誤解です。

意識を失う選手は全体の1割以下です。

ほとんどの場合、選手は立っていられます。

だからこそ、見逃されやすいのです。

脳震盪は、頭に直接ぶつかった場合だけでなく、身体の別の場所に衝撃が加わって頭が急激に動いた場合でも起こります。

いわゆる、むち打ちのような動きです。

サッカーでは、相手との競り合い、転倒、ゴールポストへの衝突、ボールが顔面に当たるなどがきっかけになります。

子どもは大人より脳震盪のリスクが高い

成長途中の子どもの脳は、大人と比べて衝撃に対してデリケートです。

また、症状を「うまく言葉にできない」こともあります。

言ったら試合に出られないから黙っている」ということもあります。

だからこそ、周りの大人が「おかしい」と気づいてあげることが重要です。

子どもの脳震盪、これが症状のサイン

脳震盪の症状は多様です。

「これが出たら脳震盪」というひとつの決め手があるわけではなく、いくつかの症状を組み合わせて判断します。

外から見てわかるサイン

試合中・直後に、以下の様子が見られたら要注意です。

  • ぼーっとした表情、うつろな目線
  • 歩き方がふらついている、転びそうになっている
  • 立ち上がりが遅い、動きが鈍い
  • 質問への反応が遅い
  • 「今どこ?」「何点?」に答えられない
  • 頭を抱える、頭をかいている
  • 痙攣が起きている(→ これはすぐ救急)

本人が訴える症状

子どもが以下のことを言ったら、軽く流さないでください。

  • 頭が痛い
  • 頭が締めつけられる感じ
  • ふらつく、めまいがする
  • 吐き気がある
  • 眠い
  • ぼやけて見える
  • 光がまぶしい、音がうるさく感じる
  • 「なんかおかしい感じ」
  • 首が痛い
  • イライラする、悲しい気分

「なんか変」は大事なサイン

「なんか変」「いつもと違う」

この感覚を親御さんやコーチが持ったとき、それはとても重要なサインです。

脳震盪の診断は、医療専門職でも難しい場合があります。

だからこそ、「これが当てはまるから脳震盪」と決めることよりも、「何かおかしい」と感じたら安全側に判断することが大切です。

レッドフラッグ:すぐに救急へ連れて行くべき症状

以下の症状が見られた場合は、脳震盪の範囲を超えた重篤な状態の可能性があります。

迷わず救急対応をしてください。

  • 痙攣・けいれん
  • 嘔吐
  • 意識を失っている、または反応がない
  • 腕や足のしびれ・脱力感
  • 激しい頭痛、または頭痛がどんどん悪化している
  • 視界が二重になっている
  • 首の強い痛み・圧痛
  • ひどく混乱している、興奮している

これらは「すぐに医療機関へ」のサインです。

「様子を見よう」ではなく、すぐに動いてください。

その日は絶対に復帰させてはいけない理由

脳震盪が疑われる場合、その日は絶対にプレーに戻してはいけません。

これは「大事をとって」という意味だけではありません。

医学的に明確な理由があります。

セカンドインパクト症候群

脳震盪を起こした状態でプレーを続け、さらに頭に衝撃を受けると、「セカンドインパクト症候群」という非常に危険な状態になることがあります。

最初の衝撃が軽くても、2回目の衝撃で急激な脳の腫れが起き、重篤な障害につながる可能性があります。

成長期の子どもは特にこのリスクが高いとされています。

本人が「大丈夫」と言っても止める

脳震盪を起こした選手は、自分の状態を正確に認識できていないことがあります。

「大丈夫!続けたい」という言葉を信じてはいけない場面があるのです。

「受傷した当日は競技復帰ができない」

これはFIFAをはじめ、国際的なスポーツ医学の共通ルールです。

どれだけ軽そうに見えても、その日は休ませることが正解です。

翌日・翌々日も要注意——症状は遅れて出ることがある

脳震盪の症状は、頭を打ったすぐ後に出るとは限りません。

数時間後、あるいは2〜3日後に初めて症状が出てくることもあります。

「昨日は大丈夫だったのに、今日になって頭痛がひどい」

「なんとなく元気がない日が続いている」

そういったケースが実際にあります。

頭を打った後は、少なくとも3日間は注意して観察してください。

家庭でできる確認ポイント

  • いつもより元気がない、ぼーっとしている
  • 食欲がない、吐き気がある
  • 学校から帰ってきたら頭が痛いと言っている
  • 眠れない、または逆に異常に眠い
  • イライラしやすくなっている
  • 集中できない、勉強が頭に入らないと言っている

これらが続く場合は、医療機関を受診することをお勧めします。

競技に戻るまでの正しい7つのステップ

脳震盪の後、スポーツに戻るには段階的なプロセスが必要です。

「症状がなくなったからOK」ではなく、ステップを一段階ずつ踏むことが再発予防と安全な復帰につながります。

FIFAをはじめ、国際的なスポーツ医学が推奨する段階的復帰の考え方を、わかりやすく整理しました。

ステップ 内容 目安
完全な安静(頭を使う作業・スマホも控える) 症状がなくなるまで
軽い有酸素運動(ウォーキング程度) 症状が出なければ翌日へ
スポーツ特有の動き(ドリブルなど、接触なし) 症状が出なければ翌日へ
接触なしの練習参加 症状が出なければ翌日へ
フルコンタクトの練習 医師の許可後
試合復帰 医師の許可後

重要なルール:途中で症状が出たら1つ前のステップに戻る。

各ステップは最低1日かけます。

急いで進めることが一番危険です。

「もう大丈夫そうだから飛ばそう」

この判断が、再発や重篤化につながります。

また、ステップ⑤・⑥への移行は必ず医師の許可を得てから行ってください。

親・コーチができる「かもしれない」の習慣

現場でできる一番大切なことは、「かもしれない」と思ったら止める習慣を持つことです。

FIFAが世界中の指導者・親・審判に向けて作ったプロトコルのタイトルは、「かもしれない、疑って守る」という言葉で始まります。

脳震盪かどうかを正確に見極めることよりも、「何かおかしい」と感じたときにプレーを止めさせることの方が、はるかに大切です。

試合中に使える簡単な確認方法

頭を打った選手を試合から離したら、落ち着ける場所でこの質問をしてみてください。

  • 「今日はどこの会場で試合してる?」
  • 「今、前半?後半?」
  • 「さっき点を入れたの誰だった?」

これらの質問にスムーズに答えられない場合は、脳震盪の可能性が高まります。

ただし、これで大丈夫だったから復帰させてOK、とはなりません。

あくまでも「おかしいかどうか」を確認するためのツールです。

何か気になることがあれば、その日は休ませることが正解です。

「大丈夫」と言わせない環境をつくる

子どもたちは「試合に出たい」「迷惑をかけたくない」という気持ちから、症状を隠すことがあります。

「頭を打ったら正直に言っていい」

「言ったことで怒られない」

そういう安心できる環境をチームや家庭の中につくることが、子どもたちの脳を守る大前提です。

不安なときは、一人で抱え込まないでください

原村・八ヶ岳エリアでスポーツをする子どもたちのそばで、私はいつも思っています。

この子たちに、長く・楽しく・元気にスポーツを続けてほしい。

脳震盪は、適切に対応すれば多くの場合、後遺症なく回復できます。

でも、見逃したり無理をさせてしまったりすると、長期にわたる影響が残ることもあります。

「頭を打ったみたいだけど、大丈夫かな」

「症状がある気がするけど、受診するほどでもないかな」

そんな判断に迷う場面こそ、お気軽にご相談ください。

当院では、柔道整復師・鍼灸師として、そしてスポーツ現場に関わるトレーナーとして、子どもの体とスポーツを総合的にサポートしています。

お子さんの状態を確認した上で、必要であれば医療機関への受診もご案内します。

「脳震盪かも?」と思ったら、その日は試合を離れさせて、まずご連絡ください。

子どもが元気にグラウンドに戻れる日のために、一緒に考えましょう。

たなか整骨院鍼灸院
長野県原村・八ヶ岳エリア
柔道整復師・鍼灸師・NSCA-CSCS(スポーツトレーナー)
FCアビエス専属トレーナー/小学生サッカーコーチ

この記事を書いた人

院長パパ

院長パパ|たなか整骨院鍼灸院 院長 田中経義

柔道整復師・鍼灸師・NSCA-CSCS。長野県原村・八ヶ岳エリアで、育児中のママ・パパ、スポーツを頑張る子どもたちの体づくりをサポートしています。

社会人サッカーチームFCアビエスの専属トレーナー、小学生サッカーコーチ、1児の父としての目線も大切にしながら、「家族を支える人が、家族と笑顔で過ごせる体づくり」をお手伝いしています。